長谷川等伯「松林図」を見る

5月3日、朝10時頃、京都国立博物館。70分待ちの行列、傘は日傘です。暑い一日でした。
「松林図」は私にとって近代の日本画の中で一番見てみたい作品でした。それは美しくて、静かな作品でした。意外なことが二つ。想像していたより少し、小さな屏風絵でした。展覧会場の他の絵が大きすぎたせいか。そして、400年を経たのに、紙の黄ばみがほとんどなく、白く美しい。しかし、あんなに憧れていた作品の前に立っているのに、それ以上の感動が伝わってこない。たぶん今の私には、この幽玄の水墨画の世界を感知する力がないのだろう。「松林図」は会場の一番最後の部屋にあったので、そこまで行く前に体力を使い切ってしまったのか。大勢の観客がいたので、あと戻って鑑賞するのをためらって、順番に見てしまった。やはり一番メーンの作品を先に見るべきだったか。しかし等伯はやはりすごいなあ。死後400年たってもこれだけ多くの人に愛されている。やはり来て良かった。特に印象に残った作品は「波涛図」。金箔地に岩と波をあしらった作品、岩の写実と図案化した波がよくマッチして見事。そして「萩芒(はぎすすき)図屏風」特に左隻の「芒図」。ススキが何百本と、これでもかこれでもかと何重にも重なりあい、ええっ…、こんな絵見たことない。斬新な意匠。おしゃれ。素晴らしい。今回の等伯展の中で一番好きな作品でした。博物館を後にして、26歳で夭折した息子の久蔵の描いた「桜図」を智積院(ちしゃくいん)で見ることも出来ました。もう一度、東京国立博物館でこの「松林図」と対面したいと今、強く思っています。

「萩芒図屏風」の左隻「芒図」(今回の展覧会の図録より)  私の中の№1の作品です。あんまりはっきりした写真じゃないのが残念。